俺様社長に甘く奪われました
莉々子と志乃が紅白幕を張り、松永がパイプ椅子を並べる。重い講演台をホテルのスタッフと一緒に運び、木村は白手袋やテープカット用のハサミなど、細かいもののチェックをした。
そうして急ピッチで設営が終わったのは、午後十二時を回った頃だった。もう間もなくすると、得意先のアビーや建築会社の面々もこちらに姿を現すだろう。
「なんとか間に合いましたね」
木村が額の汗をハンカチで拭いながら、ホッとひと息吐く。
「みなさん、本当にありがとうございました」
莉々子は、これ以上無理だというほどに頭を下げた。
こんなに大変な準備になるはずではなかった。
「なーに大丈夫ですよ、莉々子ちゃん。ひとまず第一段階は突破しましたからね。あとは滞りなくセレモニーを成功させましょう」
木村が莉々子の肩をトンと優しく叩く。