俺様社長に甘く奪われました

 莉々子はセンターの説明をする奏多を会場の一番後ろから見つめる。堂々とした姿はもちろんのこと、原稿を見るわけでもないスピーチは淀みなく、とても自信に満ちていた。


「我々朝菱ソリューションは、今後も物流の効率化や環境に優しい物流事業を推進することにより、地球温暖化防止等の環境保全にも配慮し、循環型社会の形成に貢献していきます」


 最後にはスケールの大きさも見せつけ、会場から盛大な拍手が巻き起こった。

 そうして滞りなくセレモニーが閉会し、これからは立食パーティーとなる。すでにル・シェルブルからは料理が運び込まれ、センター内にはお腹を空かせる匂いが漂っている。


「それにしても、あのル・シェルブルから料理まで手配するなんて……」


 志乃が小さく呟く。


「社長の高校時代の友人が副社長をされているそうです」
「そうなんだ……」


 志乃はどこか視点が定まらない様子で小刻みにうなずいたあと、どこへ向かうわけでもなくふらっと足を出した。

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