俺様社長に甘く奪われました
◇◇◇
「この傷、どうしたんだ」
奏多と一緒に身体を沈めたバスタブで、莉々子の膝の絆創膏に彼が目ざとく気がついた。
「帰りに駅の階段で転んじゃったんです」
「階段で? それで、ほかにはどこも怪我してないのか?」
奏多が莉々子の前に回り込み、身体のあちこちをくまなくチェックする。
「ほかは大丈夫です。あの、私の気のせいかもしれないんですが……」
奏多に言うべきかどうか土壇場で迷う。
「なんだ、言ってみろ」
「はい……。階段で後ろから押されたような気がして……」
誰かのカバンが当たった可能性もあるが、人の手のようにも思える。物がたまたまぶつかったのではなく、故意に手で押されたような気がしなくはないのだ。そのときのことを思い出して、莉々子は背筋がかすかにゾクッとするのを感じた。