俺様社長に甘く奪われました

「……奏多さん?」


 急に呆けたようにしてしまった彼を呼ぶと、奏多がいきなり真顔になる。


「莉々子、明日から一緒に通勤しよう。俺が車を出すから、絶対にひとりになるな」
「そこまでしなくても大丈夫です。今日の怪我も、私の勘違いかもしれないですし」


 そうであってほしくて、わざと笑い飛ばす。
 現在の奏多は、行きも帰りも会社から手配されたハイヤー。わざわざ自分の車を出すまでもない。


「ダメだ。なにかあってからでは遅い」


 奏多は頑として譲ろうとしない。
 どうしてそこまで必死になるのか。仮に手で押されたのだとしても、故意ではなくてたまたま当たっただけということもある。奏多の様子を見ていると、まるで莉々子がこれからも誰かに狙われるような言い方だ。


「私が行きも帰りも一緒じゃ、奏多さんの仕事に障ります」
「そんなことを莉々子が心配するな。とにかく、明日からそうするぞ」


 奏多はそう言い含めてから真顔を解く。優しく微笑み、莉々子に口づけた。

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