俺様社長に甘く奪われました
松永をはじめとした総務部の施設管理担当者は現在、ビル内のダクト清掃を行っている最中。それは社屋にあるダクトすべてという大掛かりなもので、床や壁を汚さないように養生シートを貼らなくてはならない。テープはそのために必要なのだ。
「それじゃ、私が買ってきます」
テープの残数が少ないことに気づかなかったのは、備品を管理する莉々子のミスでもある。
「そうしてもらえると助かりますよ。では我々はひと足先に準備を始めていますね」
「はい、すぐに行ってきます」
「莉々ちゃん、気をつけてね」
木村と志乃に見送られ、莉々子は会社を出た。
薄いグレーの雲が広がった空が雨を予感させる。どことなく湿った空気の中、経理部で調達したお金をポケットに入れて歩いていた。
(戻るまで雨が降らないといいな)
歩いている人たちの手に傘が握られているのを見て不安になる。テープを手に入れられる一番近くの店までは、会社から歩いて片道十分程度。急いで買って戻れば大丈夫だろう。