俺様社長に甘く奪われました

◇◇◇

 奏多は暗い気分のままレターオープナーで真っ白い封筒を開けた。なにが書かれているのかおおよその見当がつくのは、これで五通目だからだ。宛名も中身もすべてパソコンで打ち出したもの。これまでに届いたものもすべてそうだった。

 四つ折りにされた紙を開くと、奏多が想像していた文章がそこには綴られている。

『倉木莉々子の身を案じるのならば、今すぐ別れよ』

 中身はいつも似たようなことが書かれた一文きりだった。

 最初は単なるいたずらだろうと思っていた。だがしかし、この手紙が届くようになってからというもの、莉々子の身辺で不可解なことが起きているのも事実。駅の階段で彼女を突き落したのも、スクランブル交差点で車道に押したのも、おそらくこの手紙の差出人の仕業だろう。

 莉々子は自分の手で守る。そう心に誓った奏多だったが、それが可能なことなのかわからなくなっていた。四六時中彼女を見守ることが、現時点でできていないからだ。


「社長、お約束のお客様がお見えです」


 社長室のドアから上田が顔を覗かせる。奏多は、彼女がドアをノックした音にも気づかなかった。

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