俺様社長に甘く奪われました
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望月から頼まれた航空券を手配し、朝ソリのビルの隣にある旅行代理店で発券してもらうと、ちょうどお昼の時間となった。
向かった社員食堂は、その日も大いに賑わっている。
二階のワンフロアをすべて使ってかなり広い上、女性向けのメニューや成人病予防にもなる定食が豊富に取り揃えてあり、外食する人はほんのひと握り。財布にも優しい値段設定で、莉々子はほぼ毎日社員食堂でランチをとっている。
テーブルで莉々子の向かいに座る沢田真紀(さわだ まき)は、社長室での出来事を話す彼女をニコニコした顔で聞いていた。
莉々子と同期入社の彼女は総務部の松永の彼女と同じ不動産部に所属し、細面で儚げな顔立ちをした日本美人。本人は幸の薄い顔立ちだと思い込んでいて、それを和らげるために栗色のショートカットで快活なイメージを演出している。
「それでどうだった? 我が社きってのイケメンとふたりきりの時間は」
真紀はからかうように言って、食べ終えたトレーを脇へよけた。
「と、特になにもないよ」
望月に汚れを拭ってもらったことを思い出して莉々子の目が泳ぐ。まさかあの場面で望月にそんなことをされるとは思わなかった。