俺様社長に甘く奪われました
「あら? なーに? その反応は」
真紀が身を乗り出して目を細める。
すかさず鋭く突っ込まれ、莉々子はギクッとしてしまった。
「や、やだな、なにもないの。真紀は、私がお金持ちのイケメンが苦手なことは知ってるでしょう?」
動揺を隠すために唇を尖らせ、真紀を軽く睨む。顔の汚れを取ってもらったことは、なんとなく言えなかった。
「もちろん知ってるけど」
真紀はそれでもなにかを期待するかのように笑う。
「いい加減、忘れたほうがいいんじゃないかなと思ってね」
「それはわかってるけど……」
「まあねぇ、あんな振られ方をしたら莉々子みたいにトラウマになっても仕方ないけどさ」
真紀はすっかり冷めたお茶を一気に飲み干した。
あれは社会人一年目の夏のこと。
真紀も含めた同期の女子数人で遊びに行った海で、莉々子はある男性と恋に落ちた。