俺様社長に甘く奪われました
あれから三年。莉々子と顔を合わせても、望月になんのリアクションもないということは、そのときのことは忘れたか、気まぐれに慰めた女の顔は記憶の彼方に追いやられているのだろう。間近で接した今日も、彼のほうに莉々子に気づいた様子はなかった。
「ねぇ莉々子、実はこんなものがあるんだけど」
そう言って真紀がテーブルの上を滑らせたのは、なにかのチケットのようだった。
「これ、なぁに?」
「【ル・シェルブル】の最上階にあるラウンジのカクテル券。取引先からもらったんだけど、莉々子に譲ってあげる」
「えっ、いいよ、私は。真紀が行ったらいいのに」
「実は期限が今日までなの。でも私、今夜は都合が悪くて。だから莉々子が代わりに行ってきて」
ル・シェルブルは、誰もが一度は名前を耳にしたことのある一流ホテル。格式が高く、莉々子は今まで一度も行ったことはない。
「せっかくだけど私もちょっと……」
「そんなことを言わないの。ここで新しい出会いがあるかもしれないじゃない。いつまでも元彼の言葉に縛られているんじゃなく、次のステップに進もうよ」
莉々子は半ば強引に真紀にチケットを握らされ、行くことを約束させられてしまった。