俺様社長に甘く奪われました
「……どうして莉々ちゃんなの」
志乃が消え入りそうな声で突然ポツリと呟く。
「はい?」
なんのことを言っているのかわからず、隣を歩く志乃を首を傾げて見た。
志乃は目線を落とし、まるでなにか気に入らないものでもあるかのように眉間に皺を寄せ地面を見つめている。
「志乃さん? どうかしたんですか?」
志乃の様子がどうもおかしい。
「なんで私じゃなかったの……」
(……志乃さん?)
不意に足を止めた志乃が莉々子を見る。その目にどこか尋常じゃないものを感じ、莉々子は本能的に彼女から一歩離れた。
「ずっと前から彼のことを好きだったのに……。莉々ちゃんよりうんと好きなのに……」
(彼って……まさか奏多さんのこと……?)