俺様社長に甘く奪われました

　声にすらならなくて心で叫ぶ。
　あっという間にふたりの元へやってきた奏多がすかさず志乃から莉々子を引き離し、同行してきた三十代中頃のもうひとりの男が志乃の両腕を掴んで拘束した。


「莉々子、大丈夫か！」


　志乃に掴まれていた腕を押さえながらも莉々子が小さく何度もうなずく。いまだに状況が飲み込めず、彼女を宥めるように肩を抱く奏多に寄り添った。


「彼女だったんだ」


　奏多が冷ややかな目を志乃に向ける。


「……彼女だったって？」
「あの脅迫文」
「えっ……」


　思いがけないひと言が莉々子から言葉を奪う。

（私に危害を加えると脅していたのが、志乃さんだった……？）

　莉々子は信じられない思いで志乃を見つめた。