俺様社長に甘く奪われました

「彼の協力の元、脅迫文が投函されたと推測される郵便ポスト周辺の監視カメラの映像を解析してわかったんだ」


 彼というのが今、志乃を拘束している人だった。今回のことをお願いしていた顧問弁護士の田崎だ。


「それと、莉々子が車に轢かれそうになった交差点付近の監視カメラにも、彼女の姿が映っていた」


 半信半疑で奏多を見上げると、とても嘘を言っているようには見えなかった。

(……私の背中を押したのも志乃さん? それじゃ、もしかして駅の階段もそうなの……? 嘘でしょ。信じられない……) 

 そこで志乃が、突然その場に泣き崩れる。膝を突いたかと思ったらアスファルトに座り込んで顔を覆い、肩を震わせた。


「……志乃さん、本当なんですか? 本当にそんなことをしたんですか?」


 震える唇で彼女に問いかける。莉々子はまだ信じられない思いでいっぱいだった。
 いつも優しく笑いかけてくれていたあの志乃が、そんなことをするとは思いたくなかった。

 ところが志乃は泣きじゃくるばかりで、莉々子に答えをくれはしなかった。

< 306 / 326 >

この作品をシェア

pagetop