俺様社長に甘く奪われました
「さっき弾いていたのはなんていう曲ですか?」
莉々子がハミングしてみせると望月は突然吹き出した。
「音痴なのか」
肩まで震わせてクククと笑う。
「ひ、ひどいです」
即座に抗議はしたものの、望月があまりにも楽しそうに笑うものだから、莉々子はつい見入ってしまった。会社ではめったに見られない笑顔だ。
(そんな顔をして笑うんだ……。会社の女の子たちが見たら悲鳴にも似た歓声を上げるかもしれない)
不意に望月があるメロディを口ずさむ。
「あ……それです」
莉々子は思わず人差し指を突き出した。さっき望月がラウンジで弾いていたのは、その曲だ。
「ショパンのエチュード十の三 ホ長調。通称別れの曲」
「そんなタイトルなんですね。すごく素敵な旋律ですよね」