俺様社長に甘く奪われました
きっと生まれたときから道筋が違うのだろう。約束された輝かしい未来に向かって、一直線に栄光の道を進んできたことは想像に容易い。
「……俺は隠し子だ」
「はい……?」
望月が突拍子もないことを言うものだから、莉々子が小首を傾げて聞き返す。
(今なんて言ったの? 『隠し子だ』って聞こえたけど、まさかね。幻聴が聞こえるほど飲み過ぎたのかな)
目を瞬かせて望月の次の言葉を待っていると、彼の真っすぐな眼差しが莉々子に注がれた。
「俺は、朝菱商事の代表取締役社長、東条源之助(とうじょう げんのすけ)の隠し子なんだ」
望月がきっぱりと言ったことで、莉々子の酔いが一気にさめた気がした。
莉々子が朝ソリに入社するずっと以前に東条が離婚していることは知っている。子供に恵まれなかったことも。ただ、隠し子がいる話はこれまでに一度も聞いたことがない。
どこか陰の差した望月の顔を莉々子は茫然と見つめる。