俺様社長に甘く奪われました
三十二歳の若さで朝ソリの社長の地位を築いていられるのは、東条の息がかかっているためだったのか。新鋭のIT企業ならともかく、老舗の商社である朝菱商事のグループ会社。普通に考えれば、血族でもない限り社長職に就くことは難しいだろう。ということは、望月が今言ったことは真実ということになる。
なに不自由なく生きてきたものだとばかり思っていた莉々子は、望月がそのような重いものを背負っているとは想像すらしなかった。
(社長なりに大変な人生だったのかも……)
つい同情的な気持ちになる彼女を尻目に、望月は突然クスクスと笑いだした。
「……どうしたんですか?」
「冗談だ、冗談。まさか真に受けるとは思わなかったな」
クククとおもしろそうに笑い続ける。
(え? 冗談……? そんな……)
呆けたようにする莉々子を横目に、望月はまだ笑っている。
莉々子はスカートをギュッと握り締めた。
(自分の生い立ちを偽って人の気持ちを弄ぶなんてひどい)
グラスを少し乱暴にテーブルに置き立ち上がる。