俺様社長に甘く奪われました

 自分自身でもかなり怪しいだろうと莉々子は思う。もしもこれが別の女性、例えば志乃だったら、莉々子も絶対にふたりの仲を疑うだろう。
 現にいつも優しい目をしている志乃が、どことなく湿気を含んだ眼差しで莉々子を見ている。完全に疑惑を持っているに違いない。

 男性陣はその話題にすぐに飽きたのか、「まぁ今度は社長室に忘れ物なんかしないようにね」なんて言いつつ仕事に戻った。忘れ物をした場所が、彼らの中で社長室になっていて助かってしまった。この前の異臭騒ぎのときに置き忘れたと思ってくれたのだろう。


「……志乃さん、本当になんでもないんです」


 ムキになるほうがかえっておかしい気もしたが、変な誤解はなるべく避けたい。
 志乃は「そう」と軽く微笑み、パソコンに向かった。
 それを見届けてから小さく丸めた紙袋を机の引き出しの奥にしまい込み、莉々子も各部から届いたメールの確認を始めた。


 それから十分ほど経ったときのこと。総務部の内線が鳴り、松永がすぐさま応答する。


「はい、すぐに参ります。……え? ……倉木、ですか?」

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