俺様社長に甘く奪われました

「社長、莉々子ちゃんのことが気に入っちゃったのかね」


 腰を上げた莉々子を木村がからかう。
 気に入るとはなんなのか。莉々子がついジトッと睨むと、「さてと、私は巡回にでも行ってこようかな」と木村は逃げるように総務部を出ていってしまった。


 この際だから、望月にはストッキングは届けなくていいと、ひと言もの申しておこう。彼のデリカシーのない行動のおかげで、みんなからからかわれてしまったと。

 莉々子にしては珍しく鼻息荒く社長室をノックすると、中から「どうぞ」と返事があった。


「失礼します」


 莉々子が中へ入るなり、望月が「寝不足か?」と首を傾げる。

 なんのことかと莉々子がポカンとしていると、「クマがすごいぞ」と彼に言われ、そこでようや思い出した。メイクでクマを誤魔化すべくロッカールームへ行こうと思っていたのだ。そこへ望月がいきなり現れて衝撃的なことをしたものだから、すっかり忘れてしまった。


「しゃ、社長がいけないんです……!」


 説明を端折って、莉々子がつい不満をぶつける。

< 58 / 326 >

この作品をシェア

pagetop