俺様社長に甘く奪われました
「今夜、この前のラウンジで」
「こ、今夜ですか!?」
「彼氏なら莉々子のワガママくらいなんてことはないんじゃないか」
次から次へとなんということを言うのか。おそらく莉々子のことを試しているに違いない。彼氏がいるとは思っていないのだろう。望月は、片方の口角だけを上げて見せた。
「ル・シェルブルのラウンジですね。わかりました」
「楽しみにしてる。それじゃ俺は来客があるから下がっていいぞ」
「あの、チケットの件は……?」
そのために莉々子は呼ばれたはずだった。
「それは莉々子を呼びつける口実に過ぎない」
「そ、そんな……」
莉々子は自分が弄ばれているとしか思えなかった。やはり庶民はおもちゃくらいにしか考えていないのだ。
こうなったらなにがなんでも望月に“彼氏”を紹介しなければならない。
固く決意をしたところで社長室のドアがノックされる。顔を出した秘書の上田は、莉々子を見て“あらいたの?”といった表情をしてから、「お客様がお見えですが」と望月にお伺いを立てた。