俺様社長に甘く奪われました
「ふりぃ?」
松永が大袈裟に顔をしかめる。
「余計にふざけるな!って感じですよ」
「そんなこと言わないでほしいの。お願い」
訴えかけるように松永を見る。彼に断られたら、ほかに頼める人はいない。
「いったいどうしてそんなことを?」
松永は大きくため息を吐き、腕を胸の前で組む。呆れているのは手に取るようにわかった。
「じ、実はね、望月社長が無理やり私に友達を紹介するって言っていて」
彼氏が架空なら、望月の友達も架空。望月から直々に『付き合え』と言われたことを白状できるはずもない。あちらこちらで嘘を重ねることに胸が痛む。
「社長が自分の友達を莉々子さんに? なんでまた?」
「さ、さぁ、なんだろうね?」
不思議がる松永くんに莉々子もめいっぱい首を捻る。演技をすることがこれほど難しいことだとは思いもしなかった。