俺様社長に甘く奪われました
◇◇◇
その夜、松永を伴った莉々子はル・シェルブルへとやってきた。
「おぉ、すげぇ……」
さっきから彼は、隣でそれしか言っていない。キョロキョロと見回しては感嘆の声を漏らし、おのぼりさん丸出しだった。最上階にあるラウンジに着いてもそれは同じで、眼下に広がる夜景を見てさらにヒートアップした感じだった。
その夜景を堪能できるカウンター席に案内してもらったところで、店内で黄色い声があがる。何事かと松永とふたり揃って振り返ってみれば、ちょうど望月が入ってきたところだった。
今夜も“おっかけ”がいるみたいだ。声のほうを見たら、この前と同じ顔ぶれだった。
座ったばかりの椅子から立ち上がり、松永が「お疲れさまです」と頭を下げ、その隣で莉々子も同じように挨拶をする。黄色い声が聞こえていないのか、ただ無視をしているのか、望月は軽く手を上げてスマートな様子でふたりの前に立った。
「……こちらが私の彼、松永くんです」
「松永です!」
手で隣の松永くんを差すと、望月は莉々子から視線を横へとずらし彼を見た。