俺様社長に甘く奪われました

 松永は両手を脇に揃えて、ピンと背筋を伸ばす。彼なりに緊張しているようだ。


「……総務部の?」
「社長に顔を覚えていただいていて光栄です」


 顔を覚えてもらっていたことが相当嬉しいのか、松永はやけにご機嫌で「お座りください」と言って望月に席を勧めた。

 望月と松永に挟まれるようにして座った莉々子は、なんだかとても居心地が悪い。
 今夜は失態をさらすわけにはいかないと、莉々子はウーロン茶を、松永はジンライムを頼んだ。


「それにしても社長のご友人に莉々子さんを紹介って――うっ……」


 余計なことを言い始めた松永の脇腹に莉々子の肘鉄がお見舞いされる。手加減はしたつもりだけれど、松永は思いのほか苦しそうだ。


「ちょっ、莉々子さん、なにするんですか」


 小声で抗議する松永を望月から見えないようにしたものの、「俺の友人に?」と当然ながら望月が聞き返す。

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