俺様社長に甘く奪われました
「あぁえっと、ここの夜景ほんっとに綺麗ですね」
それを遮るように、莉々子は脈絡のないことを言ってみる。
「莉々子さん、知らないんですか? ここの夜景は恋人たちの憧れるスポットナンバーワンですよ」
「そうなの?」
莉々子は知らなかった。ここに素敵なラウンジがあることすら知らなかったのだ。
「松永くんもここは初めてでしょ?」
「はい。思った以上の景色ですね。今度里穂と――うっく」
松永をもう一度肘で小突き、きつく睨む。
(本物の彼女の名前をここで出さないで……!)
とはいえ、莉々子もなんのためにここへ来ているのかを忘れ、松永と呑気にいつものように会話をしてしまったことは否めない。
莉々子が形勢を整えようとウーロン茶で喉を潤したところで、どこからか軽快な音楽が聞こえてきた。