俺様社長に甘く奪われました
「ちょっと手をよろしいですか?」
莉々子が望月の手を取り、血を拭って絆創膏を貼る。
「そんなものを貼るほどの傷じゃないぞ」
「こういう些細な切り傷ほど地味に痛いものですから。絆創膏をしばらく貼ってからのほうが治りは早いんです」
「そういうものか」
「……はい、たぶん」
感覚的なものに過ぎないから莉々子にも自信はないが、望月の目尻に優しい笑みが浮かんだように見えた。
そこで今度は、望月の髪に目が留まる。
(ピンクの……あれは桜の花びら?)
彼女の目線に気づいた望月が「なんだ」と訝る。
「あ、いえ、そこに……。ちょっと失礼します」
そう言って手を伸ばして花びらをつまんで莉々子が彼に見せると、「桜か。風が強かったからな」と呟いた。
「風が?」
「……そうだ」