俺様社長に甘く奪われました

 莉々子が聞き返したことを不思議に思ったらしく、望月は間を空けて返した。
 こうしている場合ではない。


「すみません、急ぎますのでこれで失礼します」
「あ、おい」


 望月がいれば施錠を守衛に依頼しなくても大丈夫だろう。彼が呼び止めたようだったが、脚立と古い蛍光灯を抱えて大慌てで莉々子は社長室を出る。

 急いで身支度を整えて社屋を飛び出すと、桜の花びらが風に巻かれて一斉に舞っていた。ビル風に追われて、まるで竜巻のように夜空へと高く、高く散っていく。
 風に巻き上げられる髪を押さえながら莉々子が見上げると、ビルの隙間から顔を覗かせた黒とピンクのコントラストがとても綺麗だった。


「莉々子、なにしてるんだ」


 不意に声を掛けられ振り返ると、そこにはキャリーバッグを引いた望月がいた。


「見てください、この景色」


 目の前を指差すと、望月が莉々子の隣に並んで立つ。

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