俺様社長に甘く奪われました
◇◇◇
莉々子は、『渡したいものがある』と望月に押し切られる形で彼のマンションを訪れていた。
ワンフロア当たりの戸数が少なそうな低層マンションは、一歩足を踏み入れたそばからため息の連続だった。なんとドアマンやポーター、フロントコンシェルジュまでいて、バレーサービスもあるらしい。高級ホテル並みのサービスだ。
大理石や御影石など、素人目にもわかる素材がラグジュアリー感を醸しだしている。
三年前にも一度訪れてはいるものの、あの当時は周りを見る余裕がなかったせいで、この景色に莉々子はいっさい見覚えがない。
「適当に寛いでて」
そう言われたものの、庶民の莉々子には座ることも憚られるような室内空間だ。いかにも高級そうなソファや調度品はアースカラーで統一され、今いるリビングダイニングだけでも三十畳はあるだろう。その一角には、漆黒のグランドピアノが鎮座していた。
窓の向こうには広いバルコニーも見える。
コーヒーの香りが立ち込めたと思ったら、望月がカップをふたつ持ってソファに腰を下ろした。
「座らないのか?」
「す、座ります」