クールな部長は溺甘旦那様!?
「自分の妻の手を握るのはおかしいことじゃないだろう?」

それは、そうだけど……。

剣持部長の口から“妻”と言われるとこそばゆい。そしていまだに私は自分がこの人と結婚したということに半信半疑だった。出会いはどうであれ、剣持部長とお見合いをして、そして結婚した。そんなふうに思って無理やり自分を納得させようとしているけれど、なかなか気持ちの整理がつかないでいた。

握られる手に戸惑いながら、私は仕方なしに彼に従った。

「こう人が多いんじゃ、背の低い君を見失ってしまうかもしれない」

剣持部長が冗談交じりに笑って私の手をぎゅっと握る。

「背が低いは余計ですよ」

むくれながらも、どうしてもそのぬくもりに困惑してしまう。そんな私をよそに、剣持部長の手の暖かさがじわじわと侵食するように伝わってきて、私はその手を振りほどくことなく、渋谷の街を案内されるがままに歩いた。
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