クールな部長は溺甘旦那様!?
「わ! 剣持部長? ちょ――」

「シッ! 少しの間だけ黙っててくれ、見つかるとまずい相手がいる」

いきなり剣持部長が試着室に勢いよく入ってきてカーテンを閉めると、驚いて大きな声を出す私の口を手で塞いだ。何が起きたのかさっぱりわからないまま、剣持部長と密着する体勢にドキドキと心臓が波打った。初めて会った時と同じ爽やかなフレグランス、微かに伝わってくる彼の熱にくらくらしそうになる。

すっきりとしたドレスだから狭い試着室でも余裕はあったけれど、ふたりも入ればそれなりに窮屈だ。剣持部長は自分が試着室に入ったことで、バランスを崩さないように、ずっと私の腰に手を回して支えてくれていた。
すると、カーテンの隙間から楽しそうに談笑しながら四十代くらいの男性が店員と服を物色している姿がちらりと見えた。

「彼はこの店の店長だ。会うと話が長いし厄介なんだ」

「剣持部長に連れがいるって知ったら気を遣うんじゃないですか? 大丈夫ですよ」

お互いに小声でひそひそ話しながら、その男性が過ぎ去るのを待つ。
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