クールな部長は溺甘旦那様!?
「意思がなかったとはいえ、婚姻届だということもわかって君は記入し印鑑も押した。判断能力はあったということだ。それに、例外を除いて一度出された婚姻届は取り消すことはできないことになっている」
剣持部長は腕を組んで鼻を鳴らすと目を細めた。

「その例外っていうのは……?」

「脅迫や詐欺の場合、重婚、婚姻不適年齢だ。ちなみに、俺は脅迫も詐欺もした覚えはない、ちゃんと言葉で“結婚してくれ”と言った。それに合意したのは君だぞ」

私が合意した? いつ? どこで? いったい誰に? 

とにかくいったん落ち着こうと、訳が分からず混乱していく頭を抱えて私は何度も深呼吸した。

「私、昨日は酔っていて――」

「法律の世界に酒に酔っていて何も覚えていない、という言い訳は通用しない」

間髪入れずにそう言われてしまうとぐぅの音も出ない。

これはきっと何かの間違いだ。まだ、悪い夢でも見ているんじゃないかと自分の頬をつねってみたけれど、確かに感じる痛みが現実だと告げてくる。
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