クールな部長は溺甘旦那様!?
おかしいな……いるはずなんだけど。

不審に思ってもう一度私がインターホンを押そうと、人差し指をボタンにあてた時だった。
微かに女性の声が聞こえた気がした。慎一の声にしては声音が高かったからすぐにわかった。けれど、それは会話の声ではなく嗚咽のような短く切れる声で、ドアの向こうから不規則に聞こえてくる。

「え……?」

私は思わず中の様子をうかがおうと、そっと耳をドアにあてがった。

「あッ……ん」

え? な、なに今の?

耳をあてがって聞こえてきた声は、先ほどの声よりも鮮明だった。そのおかげで女性の声が嗚咽ではなく喘ぎ声だということがはっきりした。

し、信じられない!! まさか……だよね? そうだ、大人の鑑賞物かもしれないし。

そう思いたかったけれど、次に聞こえてきた「慎一君」という、確かに彼の名前を呼ぶ甘い声に私は凍りついた。耳がドアから離れない。

早くこの場から立ち去りたいのに足が動かなかった。
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