軍人皇帝の幼妻育成~貴方色に染められて~
***
しかし、そんなシーラの気を晴らすように、この日は楽しい授業が多かった。
苦手な作法教育の時間さえ乗り越えれば、午前は乗馬、午後は楽器のレッスンだ。
乗馬はアドルフの馬に乗せてもらったとき以来だったが、シーラは元々動物好きで運動神経もよいのだ。心の準備をしてきちんと手順さえ教われば、馬に乗るのは怖いことではなかった。むしろ可愛い馬とふれあっていられる方が、座学や作法教育の十倍は楽しい。
そうして午前の授業を終え、昼食を済ませたら、今度は初めての楽器の演奏だ。
王侯貴族らは芸術を嗜むことも、知性や気品の誇示となる。ピアノにヴァイオリン、フルートにハープ。初めて聞く楽器の音に、シーラは目をキラキラと輝かせた。
まずは手本をということで講師の男がピアノを演奏すると、シーラはうっとりとそれに聴き入った。音楽をきちんと聴くのは初めての経験だ、楽しくてたまらない。
ダンス講師がシーラはリズム感がいいと言っていたが、どうやら音感もいいようだ。何度か繰り返される伴奏の部分はすぐに覚えてしまい、身体を揺らしながら鼻歌を口ずさむ。
シーラの覚えの良さに感心した講師は、ちょっとした好奇心から彼女に歌を教えた。音階に合わせて声を出す、それだけならば楽器を奏でる技術がまだないシーラにもできるかも知れないと思ったのだ。
何度か繰り返しピアノを聴かせ、メロディを覚えさせる。歌詞はなくてもよい、自分の出しやすい音をそのままメロディに乗せればよい。
実にシンプルな教えで、ほんの遊び心だったのだが、シーラは驚くべき美声と音感の良さを披露した。
曲は大陸に古くから伝わる民謡で、子供でも歌えるような単純なものだ。しかしシーラはそれを明るく、朗々と歌いあげた。
特に伸びやかな高音は素晴らしい。シーラの澄んだ高い声の魅力が最大限に発揮される。