軍人皇帝の幼妻育成~貴方色に染められて~
「え?」
一瞬混乱したが、身体の下のフカフカとした感触と、目に映るアドルフの顔とベッドの天蓋で、シーラは自分が彼のベッドに引き込まれ仰向けに寝かされたのだと理解した。
けれど何故いきなりベッドに引き込まれたのかは理解できない。それを問おうと口を開こうとしたとき――。
「ん、ん……っ!」
覆いかぶさるようにアドルフが唇を重ねてきた。
突然のキスにシーラは心臓が飛び出しそうになったが、さらに驚くことが起きた。
「ん……ふ、ぁ……っ、ぅん……っ」
アドルフの舌が強引にシーラの唇と歯列を割り開き、口腔に入り込んできたのだ。
小さい口の中は大きな舌に支配され、たちまちいっぱいになってしまう。唾液を纏ったアドルフの舌が、シーラの小さい舌をくすぐるようにねぶってくる。
生まれて初めて知るそのなまめかしい感触に、シーラの背にはゾクゾクとした甘い痺れがせり上がった。
(何? 何、これ? どうしてアドルフ様はこんなことをするの?)
深く唇を重ねられているせいで息が苦しい。アドルフの舌を噛んではいけないと思うと上手く唾液を飲み込めなくて、口の端から溢れそうになってしまう。
離して欲しいのに、舌の付け根や口蓋をアドルフの舌でくすぐられると身体の力が抜けてしまって、彼の逞しい胸板を押し離すことができなかった。
仕方なく力の入らない手でポカポカと胸板を叩くと、ようやくアドルフは唇を解放してくれた。
唇を離す瞬間ふたりの間に銀糸が伝い、それをアドルフが手の甲で拭ったのを見て、シーラは恥ずかしいものを見てしまったような気がして顔を真っ赤に染める。
けれど、顔を染めているのはアドルフも同じだった。頬を上気させ、切羽詰まっているような、真剣なような、見たこともない表情を浮かべていた。
射貫くように見つめてくる琥珀の瞳が、少しだけ怖い。
「アドルフ、様……?」
まだ息が整わず途切れ途切れに名を呼びかけると、今度はチュッと頬にキスを落とされた。しかもアドルフは何度もそれを繰り返し、頬だけでなく瞼や鼻の先まで啄んでいく。