メーデー、メーデー、メーデー。
「入院も手術も患者の意思が最優先。私はどちらもしない」
この病室の中に自分の味方が1人もいない状態の木南先生は、誰を睨めば良いのか分からないのだろう。視線を床に落とし、唇を噛んだ。
「それは『患者に正常な判断能力がある場合に限り』よ」
「…何言ってるの? お母さん。私が異常だとでも言うの?」
木南先生は、怒りながらもわけの分からない事を話す母親に対して『フッ』と笑いながら乾いた息を漏らした。
「異常ね。あなたは過去の出来事と今回の病気で錯乱状態なのよ。とても正常な精神状態とは言えないわ。精神科医の私が言っているのだから、間違いないわ」
「…お母さんが平気で誤診する様な医者だったなんてね。私、ずっとお母さんの事を尊敬していたのに」
『馬鹿馬鹿しい』と木南先生が呆れた様に笑った。