メーデー、メーデー、メーデー。
 
 呼吸もままならないほどに泣き崩れる木南先生を、木南先生のお母さんが抱きしめた。

 こんな風に泣く木南先生を、初めて見た。

 ずっと平気なふりをしながら苦しんでいたかと思うと、胸が押しつぶされそうな程に苦しい。

 どうする事も出来ずに突っ立っていると、

 「柴田くん。デパス持ってきて。…あと、一応グローブも」

 早瀬先生がオレに指示を出し、

 「治療方法などは後日改めて説明に伺います」

 自分も病室を後にしようとした。

 「…結構です。知っていますから。私も一応医者なので。説明したいなら、母に話してください。母も医者ですが」

 木南先生の最後の抵抗なのだろう。木南先生は早瀬先生のを治療方針を聞く事を拒否した。
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