メーデー、メーデー、メーデー。

 「木南先生も医者ならお分かりでしょう? 治療方法も薬剤も何種類もあります。相談の上、決定しましょう」

 早瀬先生が足を止め、木南先生の方へ身体を向き直した。

 「…相談の上。私の意見は通るの? さっきから私の気持ちなんて1つも汲んでもらえてないじゃない」

 木南先生がぐしゃぐしゃの顔で早瀬先生を睨み上げる。

 「私の相談は、あくまでも『治療方針』についてです。木南先生の命を救う為の何通りかある手段の相談をしましょうという話です」

 木南先生の涙を見ても、早瀬先生は態度を変えなかった。

 こんな早瀬先生を見るのも初めてだ。早瀬先生はいつだって、木南先生の意見を尊重していたから。

 「…早瀬先生まで。…いつからそんな医者になっちゃったのよ。お母さんも早瀬先生も、患者の気持ちを無視する様な医者じゃなかったじゃない」

 木南先生が両手を床に着き、拳を作って項垂れた。
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