メーデー、メーデー、メーデー。

 早瀬先生の言葉の意味を悟り、背中がゾクっとした。

 早瀬先生が、木南先生のお母さんが帰った後も病室に残っていたのは、オレを待っていたわけではなかった。

 木南先生をひとりに出来なかったんだ。

 木南先生をひとりにしてしまったら、何をしでかすか分からないから。

 そんな木南先生に薬を持って近づく。

 「木南先生、デパス持って来ました。飲んでください」

 ベッドに付属されているスライド式のテーブルの上に、薬と水の入ったコップを置く。

 「……」

 木南先生は枕に顔を埋めたまま、返事もしてくれない。

 「木南先生、飲んでください。眠ってしまった方が楽になれます。起きていたって辛いでしょう? 逃げようにも、そんな体力なんか残っていないんでしょう?」

 布団がかかった木南先生の肩を揺すると、木南先生がムクっと起き上がった。
< 160 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop