メーデー、メーデー、メーデー。
医局を出て、エレベーターに乗り、学長室へ向かう。
学長室になんて行った事もなければ、近寄った事すらない。
学長室のある階に着き、エレベーターのドアが開くと、未知なる場所へ重い足取りで踏み入る。
そして、学長室のドアの前に立つ。
ノックをしようと右手の拳を振り上げ、やはり躊躇う。
深呼吸の様な、ため息の様な息を1つ吐き、気を取り直してドアを叩くと、中から『キミ、顔採用だよね?』と疑ってしまう程のモデルの様な美人秘書がドアを開けた。
「研修医の柴田です」
「お待ちしておりました。中へどうぞ」
美人秘書に誘導されて、部屋の奥へと入って行くと、白髪で髭を生やした、ドラマなどでよく見かける分かり易いTHE学長が、大そうお高そうな革の椅子に座ってオレを待ち構えていた。
「君が柴田くん?」
研修医の名前など知るはずもない学長が、オレが『柴田』である事を確認した。