メーデー、メーデー、メーデー。
目の前を塞ぐほどの量の花束は、進行方向も足元も見えにくくさせ、非常に歩き辛い。
誰かにぶつからない様に慎重に歩を進めながら、医局を目指す。
「…感謝の印が割りと厄介」
やっとの思いで医局に辿り着き、ドアを開くと、
「柴田くん、学長の娘さんと結婚でもするの?」
両手から零れ落ちそうな数の花を抱えるオレを見て、春日先生が目を丸くしながら笑った。
「違いますよ。木南先生に野村さんのオペをお願いしたってだけの功績に対するお礼だそうです」
『よっこいせ』と、ドアに1番近いテーブルに花束を置いて、首を擦りながら回す。3つの花束を無理矢理1つに纏めた花束は、かなり持ち辛く、運ぶのに一苦労だった。
「怒られるんじゃなくて褒められたんだ。良かったね!! 柴田くんに木南の連絡先を教えたのは春日先生ですってちゃんと学長に言ってくれた?」
『木南先生にオペをお願いしただけ』のオレの働き以下の事しかしていないくせに、鬱陶しい質問をしてくる春日先生。