メーデー、メーデー、メーデー。

 木南先生の病室の前に着き、一応ノックはするが、どうせ木南先生は返事をしてくれないので、勝手にドアを開け、花を運び込む。
 
 「…多すぎない?」

 見過ごせないほどの花の数だったのか、周りの人間との関わりを極力避けようとしている木南先生が、自らオレに話し掛けてきた。

 「今日、学長から頂いたんです。木南先生を呼んで野村さんのオペをした事への感謝の持ちらしいです。ちなみに木南先生と早瀬先生にも渡したかったみたいなんですが、木南先生は心も口も閉ざした深海の貝状態だし、早瀬先生は、『自分はちょっと手を貸しただけ』って言って遠慮したせいで、3人分の花束がオレのところに来ちゃったんですよ。
 てか、木南先生の思惑通りになりましたね。木南先生のおかげでオレ、多分同期より頭1コ抜きん出てると思います」
 
 バケツを床に置き、ひとまず花瓶を木南先生の傍に持っていく。
 
 「そんな差なんて、あっという間に追いつかれる程度の微々たるものよ。気を抜かずにキープしてよね。…って、なんかその花瓶、見覚えがあるんだけど」
 
 「でしょうね。木南先生が春日先生のお見舞いの時に持って来たものですから」

 「…花といい花瓶といい、アンタは私を訪ねて来る時は絶対にお金を使わないわよね」
 
 木南先生が呆れた白い目をオレに向けた。
 
 嫌味を言われているのに、この感じが久々すぎて、泣きそうなほどに嬉しくて、楽しい。
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