メーデー、メーデー、メーデー。

 「ところで研修医。なんでこの花瓶、水が入っているの?」

 木南先生が花瓶を見ながら至極当たり前の事を話す。

 「柴田ですよ。花瓶だからですよ。当然じゃないですか」

 『何言ってるんですか』と呆れるオレに、

 「当然じゃないわ。この病院は生花禁止。そしてこの花はどう見てもプリザーブドフラワー。水に浸けちゃダメなヤツ」

 木南先生が呆れ返した。

 「えぇ!! 何ですか、それ!! てか、まじか!! 速攻で水捨ててきます!!」

 この花のおかげで木南先生と会話が出来たのに、こんなクソみたいなミスで初めて耳にしたプリザーブドフラワーとかいうオシャレな名前の加工された花をダメにするわけにはいかない。

 『何の為に苦労して重い物を運んだんだ』と無知な自分に苛立ちながら、花瓶とバケツを持ち上げ、両手が塞がれてしまっている為、急いで肘でドアを開けた。
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