メーデー、メーデー、メーデー。

 「早瀬先生はグリオーマのオペが得意だった。でも、木南先生が執刀をしてくれれば、野村さんのオペの助手は、正直早瀬先生じゃなくても、手が空いている脳外の先生に頼んでも出来ていた手術だったと思います。
 食道癌のオペを受ける気のなかった木南先生にとって、野村さんのオペは人生最後のオペのつもりだったはずです。そのオペの助手に、外科に転科した早瀬先生を呼んだのは、最後に早瀬先生とオペがしたかったからですよ。じゃなきゃ、『誰と恋愛しようが付き合おうが関係ない』どうでも良いはずの人間にわざわざ頼んだりしませんよ。『関係ない』って言い放ったのだって、早瀬先生を『関係のない人』と思い込みたかったからだと思います」

 「…本当にそうかな」

 早瀬先生は、木南先生に未確認のオレの話を鵜呑みには出来ない様子だった。

 『本当にそうか?』と聞かれれば、オレは木南先生ではないから『本当にそうです』とは答えられないけれど、

 「本当のところは木南先生に聞いてみないと分からないですけど、少なくとも木南先生が必要としているのは、オレではない」

 と、断言出来る。だって、木南先生がオレを求めた事など1度もない。
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