メーデー、メーデー、メーデー。

 水を捨てたといえども、実はわりと花瓶自体が重く、上腕二等筋がヒクヒクしていた。気付いてくれてありがとう、早瀬先生。

 「そうします。足止めしてすみませんでした。失礼します」

 早瀬先生に軽く頭を下げると、早瀬先生は少し微笑んで、外科の医局に戻って行った。

 そしてオレは木南先生の病室へ。

 「失礼しまーす」

 またも木南先生の返事を聞く事なく、勝手に部屋の中へ入ると、

 「遅かったね。水を捨てに隣の棟まで行ってきたの?」

 オレが戻るまでの間に、すっかり気を取り直した木南先生は、さっきまで泣いていた事を全く感じさせず、いつもの調子で冗談を言ってきた。

 オレの前では『強い先輩』でいたいのだろう。
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