メーデー、メーデー、メーデー。

 「桃井さんには、ちゃんと自分で購入した花をプレゼントしたいので」

 『木南先生の部屋に持って行く以外、思いつかなかった』などとは言いたくなくて、捻くれた言葉を返すと、

 「嫌な性格。桃ちゃんにチクるぞ」

 木南先生が『チッ』と舌打ちをした。

 「無理ですって。木南先生、桃井さんに嫌われているじゃないですか。木南先生の話なんか聞いてもらえませんって」

 木南先生に意地悪に笑うと、

 「薄々気付いていた事をハッキリ言うなよ、研修医」

 ムスっとした顔をした後に、『フッ』と木南先生も息を漏らして笑った。そして、

 「お花、ありがとう。仕事に戻りな、研修医。明日から救命だったら、今日は早く帰ってしっかり睡眠取りな。救命はまじで忙しいから。いっぱい食べてぐっすり寝るんだよ。体調管理には…」

 オレを気遣う言葉を言いかけて、やめた。

 「それ、今の木南先生に言われても響かないんですけど」

 すかさず木南先生にツッコミを入れると、

 「だろうと思って、言うのやめた」

 木南先生が『あはは』と舌を出して笑うから、オレもつられて笑った。

 木南先生の笑顔を見ながら、早く宿題の答えを出さなければと思った。

 早瀬先生が木南先生を守る役目なら、後輩のオレはきっと、木南先生を下から押し上げる役割なんだと思う。

 少しでも、木南先生の背中を押せたら。木南先生の重い荷物を、ちょっとでも軽く出来たら。

 宿題の提出期限は、月曜日。
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