メーデー、メーデー、メーデー。

 「じゃあ、退いてください」

 「本当ですって!!」

 「あ!! コンタクト外れたかも」

 突然床にしゃがみ込み、コンタクトを探す桃井さん。

 「大丈夫ですか? 桃井さんは動かないでください。オレ、視力は両目2.0なので、オレが探します」

 オレも膝を曲げて態勢を低くした瞬間、桃井さんがスクっと立ち上がり、オレの頭上から病室の中を覗き込んだ。

 「…柴田先生の嘘吐き」

 木南先生と早瀬先生が抱き合っているところを見てしまったのだろう桃井さんが、涙目になりながらオレを見下ろし、病室のドアを静かに閉じた。

「…桃井さんもでしょう。コンタクト、落としていませんよね?」

 ゆっくり立ち上ろうとしていたオレに、

 「だって、私も両目2.0ですから」

 桃井さんが右手を伸ばした。

 まだ20代だし、足腰弱ってないし、自力で余裕で立ち上がれるが、桃井さんの好意を有難く受け止め、桃井さんの右手を握り、引っ張り起こしてもらった。というか、20代の元気な男子が、好きな女の手を握れるチャンスをみすみす逃すわけもない。

 そして、泣きそうなくらいに辛いのにも関わらず、こういう気遣いが出来る桃井さんの事が、やっぱり好きだなぁと再確認した。
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