メーデー、メーデー、メーデー。
 
 「関係者だもん。退職願、取り下げたもーん。あ、これ研修医にあげるよ。ここから桃ちゃんが喜びそうなお店を選びなよ。研修医、趣味悪そうだから変な店に連れて行きそうで心配でさー。今週、お出かけデート特集だったから売店で買っておいたの」

 そう言いながら、勝手にオレの隣の席に腰を掛け、オレのデスクにタウン誌を置く木南先生。

 「休職中でしょうが。木南先生がここにいる事が誰かにバレたら、オレが怒られるんですからね!! 雑誌は有難く頂戴しますが、速やかに病室に戻ってくださいよ。…てか、散々文句を言っておいて、結局使うんですね」

 木南先生の頭にある、オレがプレゼントしたピンクい帽子を人差し指で小突く。

 「研修医がなけなしの給料で買ってくれたものだからねー」

 木南先生が『やめろ』と、小突き続けるオレの手を振り払った。

 「似合ってますよ、木南先生。何だかんだ気に入っているんでしょう? てか、もう研修医じゃありませんから」

 「アンタは初期臨床研修が終わっただけで、後期臨床研修中のゴリゴリの研修医でしょ。あ、じゃあ、初期研修が終わっているから呼び方を『レジデント』に変えてあげようか?」

 木南先生が『ねぇ、レジデント』と試しにオレを呼んでみたが、しっくりこなかった様で、『言いにくい』と自分の提案に顔を顰めた。
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