メーデー、メーデー、メーデー。
「もういいですよ、『研修医』で」
木南先生に名前で呼ばれる日はやって来るのだろうか? と半ば諦めていると、医局の内線が鳴った。
「はい。脳外科医局、柴田です」
受話器を取り、耳に当てる。
「105号室の田中さん、頭痛を訴え、嘔吐しました。すぐに来てください」
ラウンド中だったと思われる看護師さんからだった。
「…え」
看護師さんの言う『田中さん』とは春日先生が担当しているラブドイド髄膜腫の患者さんだった。
春日先生は今、オペ中。春日先生を呼ぶわけにはいかない。
早く田中さんの病室に向かわなければならない事は分かっているのに、自分の判断で正しい処置が出来るのか不安に駆られ、受話器を持ったまま固まり、1歩も動けない。