メーデー、メーデー、メーデー。

 「残念ですが、元の身体に戻す事は出来ません。
 事故に遭ってしまった事は、災難だったと思います。今、藤岡さんはそうは思えないと思いますが、藤岡さんのご家族や私たちは、藤岡さんの命が助かった事は幸運だったと思っています。
 藤岡さんが今まで見てきた現実は、厳しいものに映っていたかもしれません。ただ、藤岡さんさんはまだ21年しか見ていない。現実は確かに甘くないです。それは間違いないです。でも、世間はたまに優しいです。藤岡さんに世の中の優しい部分を知って欲しい。折角生きているのですから」

 早瀬先生が、藤岡さんを宥める様に、諭す様に言葉を紡いだ。
 
 「…その世間とやらは、私を轢いた人間にも優しかったりするの? そいつは今どこにいるの? この病院にいるの? 怪我もなくピンピンしていたりしないよね? もしそうだとしたら、私と同じ目に遭わせて来て、お母さん!!」

 しかし、早瀬先生の言葉は藤岡さんの心に響く事はなく、藤岡さんは恨みと憎悪を母親にぶつけた。
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