メーデー、メーデー、メーデー。

 ガックリ肩を落とすオレに、
 
 「早瀬先生は外科なのに藤岡さんを診に来てくれるのに、木南先生は1度も来ない」

 桃井さんが不満を漏らしながら、ナースステーションに向かって歩き出した。

 「担当医はオレだから」

 オレはナースステーションには用はないが、桃井さんの話を聞くべく、何となく一緒に歩いた。

 「柴田先生のオーベンは木南先生でしょ。無責任だと思う。藤岡さんのオペだって早瀬先生にやらせたんでしょ? やりたい放題じゃん」

 桃井さんは、藤岡さんの診察に一切関与してこない木南先生に腹を立てているようだ。

 「それは、木南先生が別なオペをしてしまったから…」

 「腸管破裂のオペでしょ? それは救命の先生でも出来るオペじゃないですか。それを、自分の技術をひけらかしたいからって勝手にやって、硬膜下血腫のオペを外科の先生にやらせるなんて…」

 木南先生への怒り爆発の桃井さんの言葉は、刺々しさを帯びていた。
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