ただいま冷徹上司を調・教・中!
「平嶋課長」

「ん?」

「どうしてアウトレットなんですか?」

私は平嶋課長に素朴な疑問を投げかけてみた。

私的にはなんの問題もないデートコースだが、何を思ってそこに行こうと思ったのだろうか。

「なんでも揃ってるだろ?」

真っ直ぐ前を見たまま平嶋課長は答える。

「まぁ、そうですね」

「服でも靴でもアクセサリーでもバッグでも。場所を買えなくても全てが揃うから、こちらもありがたい」

なんだか話がよくわからない。

私は本気で買い物をするために来ている訳ではないのだが。

「平嶋課長、何か欲しいものでもあるんですか?」

「いや、久瀬のを買うんだろう?」

「私の?」

「好きなものを選べばいい。心配ないから」

当たり前のようにそう言った平嶋課長の表情に、なんの迷いもない。

……なるほど。

ここでもこの人はなにか勘違いをしているらしい。

「平嶋課長。ウインドーショッピングという言葉を知っていますか?」

「当たり前だろう?」

「デートの鉄板ですよ?」

私がそう言うと、ちょうど赤になった信号の前に車が止まる。

平嶋課長は私をまじまじと見つめ、「それは建前だろう?」と失礼なことを聞いてきた。

「なんだかんだ言って、なにかは買わなきゃ愛情表現にはならないんだろ?」

「……今までどんな女と付き合ってきたんですか……」

深く溜め息をつくと、平嶋課長は自信満々だった顔を歪めた。

「あのですね。確かに気持ちのこもったプレゼントは嬉しいものですけど、はなからプレゼント目的でデートするわけじゃないですよ」

「そう……なのか?」

「いろんなものを楽しく見て回りましょうよ。それだけで十分楽しいんですから」

そう言って微笑むと、平嶋課長は少し拍子抜けしたような。

けれどなんだか安心したような。

そんな顔を見せてくれた。
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