ただいま冷徹上司を調・教・中!
信号が青に変わると、平嶋課長は私から視線を外して車を発進させた。

「他の人と同じ扱いをするところだった」

「どれだけ貢がされてんですか」

「いや……。女性はプレゼントに感激するって書いてあったし」

なんの本読んでたんだよ。

「買ってやれば機嫌いいし」

女に好き勝手泳がされて利用されまくるなんて。

「ほんとバカですね」

この私がまさか平嶋課長にバカという日が来るなんて、思ってもみなかった。

「すまん……」

素直にそう謝ってきた平嶋課長に、私は少しだけ心が震えた気がした。

「私は私ですからね。他の人とのことは忘れてください」

「はい」

私と平嶋課長はクスッと笑い合った。

誰とも比べて欲しくない。

そんな気持ちが大きくなった。

平嶋課長がどんな女とどんな恋愛をしてきたのかはわからない。

けれど今の話をする限り、プレゼントを貰うのは当然だと思う女性が多かったのだろうと想像できる。

私は絶対にそんな女性と一緒の括りにされたくない。

たとえ仮であったとしても、歴代で一番いい彼女だと思ってもらいたいんだ。

不思議とそんな気持ちになって、私は平嶋課長の横顔を見つめた。

イケメンというだけで苦手意識があった人だけど、今では少しだけ可愛らしいと思うなんて。

平嶋課長の素顔を知れば知るほど、私の中の固定観念が崩れていく。

この人はいったいどんな素顔を隠し持っているのだろうか。

始まったばかりのこの関係が楽しくなり始めた私は、今私だけに見せてくれている本当の顔に心が緩むのを感じていた。
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