ただいま冷徹上司を調・教・中!
ちょうど階段を下りている途中で、真っ赤な車がコーポの前に止まった。

最近よくテレビなんかで見る車種だ。

免許は持っているが車は持たず、興味もない私にとって、この車が一体なんなのかなどわからない。

けれどよく見かける車種だし、見た目から人気もあって高いんだろうということだけはわかった。

階段を下りきって運転席を覗けば。

社内では決して見ることのできない、私服姿の平嶋課長がハンドルを握っていた。

「くっそかっこいい……」

さすが人気ナンバーワン上司だ。

車窓越しでもびっくりするほどかっこいいなんて反則だよ。

助手席側に回り込み、ぺこりと頭を下げると、私は恐る恐る助手席のドアを開けた。

「おはよう」

軽く笑う平嶋課長の笑顔が眩しい。

5月の爽やかな朝にピッタリの笑顔。

こんなに絵になる男は嫌いだ。

「おはようございます。……あの、助手席に座ってもいいんですか?」

イケメンの助手は、美女が座るものだと相場は決まっている。

私なんかが足を踏み入れていいものなのだろうか。

「デートなのに後部座席に座らせるなんて有り得ないだろ?」

「じゃ、お邪魔しまぁす」

そろそろと乗り込むと、平嶋課長の姿を盗み見た。

カーキのパンツと黒のインナーシャツにライトベージュのシャツがマッチしていてオシャレだ。

髪型もワックスで無造作にあそばせている。

いつものイケメン度、 振り切ってるじゃないか……。

「今日、どこに連れてってくれるんですか?」

シートベルトを締めながらそう聞くと、平嶋課長は待ってましたとばかりに笑った。

「俺の好きなところを先に連れていけって言ってたからな。アウトレット、行かないか?」

海の近くの大型アウトレットは私も大好きで、ことあるごとに足を運ぶ。

大型観覧車も大好きだ。

「文句なしです」

浮かれた声でにっこり笑うと、平嶋課長は満足そうな表情で車を発進させた。
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